須賀: 丸の内起業塾にはありとあらゆる業種の方が参加されるわけで、10回、また最後の会に4、5人一組になって、10週間ずっとプレゼンの準備をしてもらってその発表会をやります。それこそこれまでに東京だけでも30本位のビジネスプランを拝見しているわけですけれども、ありとあらゆる商売の話がでてくる。それについて僕らはそこで点数をつけて講評して、本当にすばらしかったらお金を出してやらないかと言うわけですが(笑)、そんなに異なる人間の出すものをつなげるものはあるのか?ということはともかく、人と人との結びつき、組織の社会との関わり、それがいわゆる「会計」になり、「財務諸表」になり、数字として、特にビジネスの場合はそれがハッキリでてくる。
数字的な言語で表明されると、それをよくするためにはどうするか、いろいろな角度からアドバイスをする。アドバイスだけではなく、実際問題としてその会社の株主になってあげたり、役員になってあげたりしますね。
杉山: まさに参加型ですね。
須賀: そうそう。何かをやる上で、僕は、コンサルタントとか支援するとかアドバイスをするというのは大嫌いで、そういうことを言う人はあまり信用しない。それについて本当にいいと思ったら自分でいろんなリスクをとってそこと関わりを持たなければならないと思っています。それもリーダーの責任だと思っているわけで、傍観者になるんだったら初めから関わらないというのが僕のスタンスであるわけだし。
杉山: 責任というか、須賀さんが生半可な気持ちではないということが相手に伝わるでしょうし、かなり起業を体験されているわけですから、現場のこのような話を聴ける受講生にはメリットがありますね。
須賀:
そうですね、参加者はレベル的に高いし、商社のバリバリの室長とか、相当な人たちが、夜、眠いのにお金まで払ってきているわけだから、それでも「なるほどやはり来てこれはすばらしかった」というものをお出しできないのであれば、こんなのをやる必要もないだろうと。僕たちは大組織の中だけではそれを味わえないもので、特に起業の場合、経営資源、お金も人もモノも何もないわけですよね。その中でいわば情熱とアイディアだけで、のし上がっていくという、そのものすごい大変さがあって、そこの部分の現場的な感覚を、私もそうだし、生生しい話はいくらでもできます。
杉山:
そのようなお話が聴けることが、起業するときには一番幸せなんですよね。
須賀: 10回シリーズで、「ビジネスをやるのにこれだけは知っていないと大変困るよと」いうものをそれぞれの専門の先生にお願いしています。法務・財務・経理・ビジネスプランの書き方であるとかそういう方をきちっと抑えた上でやってほしいと。これもHBSで学んだことです。
天下国家、リーダーシップ、ジェネラルマネージメントや総合を言うのは簡単、そこまでたどり着くのは相当ミクロのもの、技術的なものもとことんまで突っ込んで、ある程度わかっていないと、実は「総合」はできない。非常にミクロとマクロのバランスをとらないといけないので、精神論だけでは金儲けはできないと。
ものの考え方とか姿勢とか起業していくやり方とか、実際我々がいろいろなところで苦労してきたことを反映させていくことはもちろん大切なことなんですけれども、なんであれビジネスをやるのであれば、「あなたバランスシートくらい読めないとだめだよ」、とかね「CFが何だかわかっているんでしょうね」、「将来の事業計画を立てるとはどんなことを考えてやっていかなかったら完璧じゃないんだよとかね」、まあ一つ一つ当たり前といえば当たり前なのですが、実は僕がこの塾を始めた大きな理由は、日本では、今言ったような起業についてのすべてを統合したものは存在していなかった、そこに非常に不満があったわけなんです。
一つは現場のがちがち主義で、たたき上げみたいな人たちが自慢話をするような、本当に小さな店から二人で始めたんだみたいな、それから精神論、えらい方々、年配の方々がよく私が若い頃はこうやったああやったという話はありますよね。かと思うと、会計事務所・税理士事務所が本当の細々とした技術だけを教えたりする講座とか、ビジネススクールや経営大学院は慶應ビジネス・スクール(KBS)のほか日本にたくさんあるのですが、やはり見ているとそういうテーマで網羅しきっているかというと、どうもそうでもないような。
杉山: 国内でMBAをとった方も丸の内起業塾に参加しているという現実がそれを裏付けていますよね?
須賀: やはりアカデミズムと実践のバランスだと思うんですよ。大学というところは大変なところだと思うのですが、日本は比較的ビジネススクールの歴史が浅いので、どうしてもアカデミックな方から入ってきちゃう面が強いと思います。それでHBSは恐ろしく、実践というものを重視して、実際に経営した人が先生になっていますよね。ケースを毎年山ほど作っている。海外各地の研究施設で、世界中で起こっている最先端のビジネスを研究している。それでケースを作る、そういうことがあるんですね。