杉山:
6月から正式に学部長ご就任されましたね。
阿川:
事実上、学部長代行として2月からやっているんだけど、もう疲れちゃいました(笑)。
杉山:
SFCの一教員としては、これまでどのような教育をされてきたんですか?
阿川:
僕はね、SFCの主流的な考え方と、自分自身の考え方が、少し違うんじゃないかと、時々思っていましてね。新しい作品より、古典が好き。未来について考えるより、古いことを知るのが好き、歴史が好き。「自由に発想をさせる教育」より「型を身につけ基礎力をつける教育」が好き。全然SFC式ではないですよね。
1999年SFCへ着任して教えはじめたとき、役立ったのは、それまで受けてきたロイヤーとしての訓練でした。特にロースクールで体験した教え方、学び方ですね。アメリカのロースクールは、法律の条文なんかはほとんど覚えさせない。むしろ法律の問題を自分自身で徹底的に考えさせる訓練をし、能力をつけるところなんです。そうしたロースクールでの教育の仕方を、学部でどれだけできるかわからないけれど、「法律的に考えるということは、こういうことなのか?」と思わせる、体験させる。
うちの研究会は、法科大学院に進んだ人が存外多くてね。それはアメリカの憲法判例を苦労してたくさん読んで、「法律的に考えること」がある時ほんのちょっとわかった。その経験をもとに、法科大学院に進んで、さらに法律の勉強を体系的にする。あるいはその経験を通じて、考えるとはこういうことなのかと覚えて、社会で役立てる。彼らはこうして、SFCで何かを掴んで、出てってくれるんですよね。教師として一番、うれしいね。

杉山:
先生の授業がとても面白いから印象に残るんだと思いますよ。
阿川: そう?(笑)教師っていい商売だと思いますよ。給料は安いけど(笑)。卒業してからも、私のことを覚えていてくれている。どんどん成長して、時々帰ってきてくれる。大根の苗を植えるのを手伝っただけなのに、あとはみんな立派な大根に育ってくれるんだもの(笑)。