杉山: 先生が個人として作品を発表するのと、会社として作品を発表するのではどのような違いはありますか?
内田: まあ、時期時期によって、自分が何をしたらよいだろうかと考える時期が40年の間にはあるわけですよ。初期の頃はまず自分を鍛えなきゃしょうがないことだし、その場合、人を結果的に巻き込むという形になるんだけど、巻き込むことが問題ではなくて、まず自分自身が良いデザインをしたいということが人に伝わっていくんだな。それが続くことになる。
それから次第に1人じゃ仕事ができないことがわかってくるわけだ(笑)。1人といっても、当時も3人で事務所をはじめて、僕とかみさんとスタッフが1人いて、最低そのくらいはいないと僕の仕事はできないんだ。でもそれはほとんど個人に近いよね。
それから、今度「スタジオ80」を1981年に作るんだけど、その時にはもっと社会的な仕事をしたいなと思った。個人的なものではなくね。社会と関わるような仕事をしたいなと。そうすると「内田デザイン事務所」ではなくてね、個人の名義ではなくもっと抽象的な名前になるべきだと思ったから、「スタジオ80」という名前にしたんだよね。
今度は個人の観察という立場ではなく、社会の観察というもっと広い立場で。もちろん併行して同じようなこともやっていますよ、テーマの重なるものが増えてくる。スタジオ80を、いいかげんやっているうちに、あまりにも事務所単位で社会とばかりやっていて、もう一度個人でやっていきたいと思って、今度は「内田デザイン研究所」を作った。その頃になると、もう1人や2人ではできないから、僕は最低でも12人を超えまいというのがテーマなんだ。12人を超えてはダメだと。
杉山: バスケットのチームの数も12人ですね。
内田: あ、そうか。
杉山: 僕が好きなフィル・ジャクソンという元シカゴブルズのコーチは、「禅」をバスケに取り入れており、プレイヤーの12人は、それぞれがそのチームにいる役割をもっていると選手に言います。
会社で喩えるのであれば、この人は会計、この人はマーケティング、この人は財務など、それぞれが自分達がチームにとっての役割を考えて、そうするとみんなが自分で考えて、自分は何ができるのかということを考えて行動するのです。先生の12という数字は、ちょうど全体を見渡せる人数ですね。部長も課長も必要のない形式ですね。みんなの顔が見える、同じテーブルで会議ができる等。
内田: だいたいそんな感じだな。見渡せるということは重要だし。ただ、特に僕の事務所は結局同じことかも知れないけど、各々が各々の役割を持つと同時に、他の役割もできるようにしなさいと。つまり、「私は設計のこの部分を担当している」のではなくて、場合によっては経理まで見る目を持てるようにしなさいと。全部が1人が変わっても違う奴ができるように12人の中でやりなさいと言っていますね。そうしておかないとまずいんだ。僕らの場合12人は組織ではないんだ、一つの個に近い単位なんです。
杉山: チームみたいな。
内田: そうですね、だから、その組織的な背景は作らないよ、もちろん役割はあるけどね。あなたは設計の仕事、あなたは企画の仕事、広報の仕事とそれぞれが持っているんだけど、それだけではダメだと、というそんな感じでね。