杉山: 『すべては一杯のコーヒーから』を読んで松田公太さんのインパクトあるご存在を知りました。僕自身も帰国子女なので、ご著書を拝読しながら、大変共感できる内容が多くありました。いつかはお会いしたいと思っていた「すごい方」なので、今日は本当にお忙しい中、お時間をありがとうございました。
松田: いえいえとんでもないですよ。海外はどちらの方ですか?
杉山: NYで13年生活していました。僕は海外で体験したことが、自分のベースになっています。松田さんもアフリカとアメリカで長く生活されていますが、それらのご経験がタリーズコーヒージャパン立ち上げにどのように繋がったか、お聞かせいただけますか?
松田: (本の方を読んで頂いたので、大体のことはご存知だと思いますが、ポイントだけお話をさせていただきますと)物心ついた時からずっと海外で生活をしていて、まず5歳からアフリカでしたが、自然と現地の生活に溶け込んでいたというところがありました。人種の違いなど小さい時はあまり考えないじゃないですか?杉山さんはアメリカでの生活は13年ですか?何歳ぐらいから住まれたんですか?
杉山: 3歳からですね。
松田: じゃ、そのころは人種や文化の違いなど意識しませんよね。
杉山: しないですね。小学生くらいになって差別されて初めて分かりましたから。
松田: そうですね、差別されて、「あれ?」って自分自身もそんな感じだったのですが。特にアフリカでは、セネガル人達からすると、そもそも東洋人自体があまりにも異質な存在で、白人の方々、例えばフランス人は見慣れているのですけれども、そんなに「東洋人は・・・」とか、ステレオタイプ的なイメージを持っているわけでもないのです。ただ「違うな」、「異質の人たちだな」という風には思ったと思うのですが、私自身は、そういうことをあまり感じずに育つことができたのです。ところが、食べ物を通じては違いというのものを感じることがありました。
杉山: どのようなことを感じられたのですか?
松田: 例えば、日本だったら、小学生の時に白人が来て、「やーい白人、外人」などとからかわれたら、「あ、なんか違うんだな」、と感じる部分があると思うし、もし私も5歳からアメリカだったら、「Hey you Jap」と言われて、「あ、なんか違うんだな?」と感じたかもしれませんが、アフリカでは幸いそういう点での違和感は感じなかったんですよね(笑)。
杉山: なるほど(笑)。
松田: ところが食べ物でカルチャーショックを感じたのですよ。たぶん、アメリカとかで「You Asian」とか差別的なことを言われて「えっ?」と初めて思ったような気付きではなく、食べ物を通しての「えー?!」という感動だったので、ショックとして自分の中に残っているのです。別にshockは悪い意味のショックではなくビックリという意味のショックですよね。
I was shocked というショック(笑)。日本語でshockedというと悪いニュアンスですが、英語だったらthat was surprisingみたいなニュアンスですよね。
杉山: 例えば何に対してshocked だったのですか?
松田: アフリカ人の友達が、私がウニを食べている姿をみて「何だよそれ!?」という風に言われて。彼らにしてみれば、別に変な物を食べる人種を馬鹿にするような意味ではなかったのでしょうけど、ウニなんて食べる人種はおかしい、自分は見たことがないということでそう言われたんだと思うのですよね。それで「この人たちはウニを食べないんだ!」と気付いて、でも、さっきは家族で「ウニって美味しいよね」、「こんなに美味しい食べ物はないよ」という。日本でナンバーワンの高級食材がこちらでは、ゲテモノ食いなんだなということでビックリしたのです。そこから始まったので、食べ物っておもしろいなという興味が湧いたのですよ。
杉山: 例えば、どんな食べ物に興味が湧いたのですか?
松田: アフリカに住んでいるとヨーロッパが近いので、夏休みに行くんです。父親は普通の水産業のサラリーマンですから、給料はそんなに高くないので、普通に飛行機でセネガルから数時間かけて、行って、レンタカーを借りて見て回る。父親の夏休みに色々な国を子ども達に見せてあげようというわけなのですが、どこの国に行っても違う食べ物があって、違うその国の特産物があって、名品に出会えて、すごく楽しかったんですよね。小さい頃からおもちゃよりもそういうものに興味が惹かれると。
例えば、ノルウェイに行ったら、水産物とか、カニとか。その都度、父親や母親も言うわけですよ。「こんなの日本に行ったら一杯1万円もするよ」とか、それがたった1000円で売っているじゃないですか?!(笑)。港でボイルされて、ゆで立てのものを“がぁっ”とこうそのまま割って食べたりするわけですよ。「こんなのないんだよ~」と言われて食べると本当に美味しいと思いますよね(笑)。
オランダに行ったらゴーダチーズに感動したり。それまでプロセスチーズみたいなものしか食べたことがなくて、見ただけでインパクトがあるわけですよ!「何この赤くてこんなに大きいモノ?」を、5、6歳の時なんて見たことないですよね?「これがチーズなんだ」と、こうやってチーズが実は出来ているんだよ言われると、それだけで驚きですよね。
スライスチーズも味見したりすると、もうめっちゃくちゃおいしいので。変わった子かも知れませんが、もらったお小遣いを全部このゴーダチーズに投資したりとかね(笑)。
杉山: それはすごいですね、本当に食べ物に興味がおありだったんですね(笑)。
松田: 本当、そうなんですよ。フランスに行った時も、エスカルゴも何か分からなくて食べて「おいしい」と思って、その後、実はカタツムリだよって聞いて「えー?!」と驚きますよね?(笑)
そういうことを子どもの頃から体験してきたので、その度に自分自身の中で、その国で感じた楽しさや、これ「うまいな」と思った感動、イコールその国を好きになっているということに気付いたのです。
オランダでゴーダチーズを食べて、「うまーい!」と思ったら、この国に住んでみたいなと、極端な話ですけど、そう思ったりもするわけですよ。そう思うと、いい国だな、「こんな美味しいものを毎日食べられるんだったら住みたいな」(笑)みたいな本当にそう思ったり、単純ですけど(笑)。子ども心にも、そういうことがあって、その国を好きになれたのではないかなと気付いたんです。