杉山: アフリカの後、日本にご帰国されてから高校卒業までボストンのレキシントンに住まれたそうですが、ボストンでも「食」に対してギャップを感じるということはありましたか?
松田: アメリカに住んでいると寿司とか刺身とかraw fishが代表的ですね。私が住んでいた30年くらい前だと、disgusting(気持ち悪い)みたいな感じで、友達には絶対に受け入れられなかった。それが悲しくもあったのですが、反面自分が過去に感じてきたことと全く逆のことを彼らは感じているので、逆においしいと思わせてあげることができれば、日本のことを好きになるんじゃないかな?と思ったんですね。
アフリカに住んでいたので猿の脳みそを食べたことがあるのですが、でも日本でそれを大学の友人に言うと、みんな「わぁー!」と驚くのですよ(笑)。
杉山: まさにインディ・ジョーンズで出てきた感じですね。
松田: まさにそうそう、本当に食べていましたからね(笑)。友人に「猿の脳みそ食ったことあるの?!なんじゃそれ!」と言われるんですよ(笑)。でもアフリカの一部の村の人々にすると「おいしい!」と、最高の食材になるわけですよ。
でも、猿の脳みそを食べる文化が日本に来たら、たぶんアフリカのその地域の本場に行って、そのうまいのを食べてみたくなるし、だとしたら、そこにあった壁も取り除けるんじゃないかなと思ったんですね。
だから日本の寿司とか刺身とかを食べさせたいと。それがもし人種差別の一つのブロックになっているのであれば、それを取り除いたら、刺身も美味しいし、こんなうまい寿司を食べる本場の日本に行ってみたいよね、そうしたら日本に行くツーリストも増えるのではないか?と本気で思ったんですよ(笑)。
杉山: やはり、本場、本物を知りたいというのは大切ですよね。
松田: 一つ本気でそう思った背景には、アメリカで当時付き合っていた彼女が、私が紹介したことによって日本の漫画を好きになって、「いつか将来、必ず日本に行きたい、秋葉原に行ってアニメとか漫画を本場で見てみたい」と言うのです。全く日本のことを知らなかった彼女がそこまで言ってくれるようになったことに感動を覚え、やはり日本食もたくさんの人たちに広めて「こんなに美味しいものがあるんだ」と感じてもらえたら本場(日本)に行ってみたいと思うようになるんじゃないかと。同じことですが、日本人がイタリアに行きたい一つの理由に地元でイタメシ、イタリアンを食べてみたい、そしてフランス料理が好きな人であれば、地元のフレンチを食べにフランスへ行ってみたいよ、ということになりますよね?
杉山: 本物を感じたいということですよね。
松田: そうですよね。本物を感じたいというのは、引いては、文化交流へと繋がればという思いもあるのです。互いの国を好きになるきっかけとなって、本当の意味で仲良くなれるんじゃないかと。それは子どものころの体験から「食を通じていろいろな文化を持っていくような仕事がやりたいな」と考えるようになりました。
最初は、寿司だと思ったのですが、寿司は既に広まってしまったので、それ以外のことはないかなと思ったのです。たまたまスペシャリティーコーヒーに出会って、(日本の文化を広めることとは)逆方向だったのですけれども、当時日本にスペシャリティーコーヒーはなく、スターバックスもなかったので、日本に持っていきたいなと。
杉山: なるほど~。今のお話をお聞かせいただいて、海外で幼いころにご家族と、「本物」を見て、そこの食べ物を食べたことがベースとなり、今の松田さんの「食文化の架け橋」のベースになっていることがよくわかりますね。そしてそれがタリーズを日本に持ってくるきっかけになったわけですね。
松田: まさにそうですね(笑)。