杉山: 海外経験はビジネスに対する考え方に影響を与えましたか?
松田: 一つ言えるのは、自分で事業を起こそうと思ったのは、海外に住んで生活していたからかも知れませんね。日本に住んでいたら、そういう考え方ってあまり育たなかったかもしれませんね。どちらかというと、未だにそうですけれども、中位でも並がいい。なんとなくそんな文化がありますよね。
例えばアメリカに住んでいて自分の友達の父親が会社を辞めたことを聞くと「何それ?」と思ったわけですよ、当時は。なぜかというと、うちの父親はずっと同じ会社に勤めているので、初めはわからないですよね。「独立」ってなんだろうそれ?と、意味がよくわからない。
不動産会社に勤めていた友達の父親が、独立して、自分の会社をやっている。その家が成功してなんとなく生活が変わっていく姿を見ると、自分でやって成功すると生活もよくなり、頑張った分だけ得られるんだなと。なんとなく自分の中で、無意識かも知れませんけど、こう理解していきました。
彼のお父さんなんかは、周辺から「よくやった!」「すごいな!」と賞賛されているので、この人はすごいことをやったんだね、と感じますよね。その時は小中学生であまり意味が分からなかったのですが。日本ではどちらかというと、起業して大成功しても心から賞賛という文化でもないような気がしますよね。
だから、日経を読んでいると、今日本の子ども達に調査をすると、「将来何になりたい?」と聞いたら、「公務員」など安定したイメージのある職業を選ぶのではないでしょうか?
杉山: 安定志向ですよね(笑)。
松田: そうそう。大企業のサラリーマンとか。あとは、「社長になりたいか?」という質問を新卒にすると、だいたい10%しかなりたいと言わないのですよね。もっと低かったと思いますね。アメリカで同じ質問をしたら、「なれるんだったら、なってみたい」と「絶対CEOになれるんだったらなってみたい」と言いますよね?
杉山: そうですよ。やってみなきゃわからないですしね(笑)。
松田: 「なりたいか?」ですよ、「なれるか?」じゃないですよ。なりたいかという質問に対して、なりたくないと(笑)。理由は「大変そう」だとか、「責任がある」とか、そんな理由でなりたくないと。どちらかというと、平穏に過ごしていきたいという気持ちを持っている方が多いみたいですね。
杉山: 文化なのかも知れませんね。日本では小さい時からお金を稼ぐということを勧めていないですからね。
松田: そうですよね。よしとしていない文化がありますからね。本にも書きましたが、タリーズ時代の社員の一人が小さい頃、お金を貯めてロボットを買ったんだけど、みんなが貸して貸してというから、みんなに貸せないし、一日100円で貸し出して、自分が買ったおもちゃ代を回収できた。その話を聞いて親が怒ったと。自分なら誉めると思いますが(笑)。
杉山: 僕も似たような経験がありますよ。ニューヨーク日本人学校の中学時代に、読み終わった週刊少年ジャンプを欲しがる友達に1ドルで売ったことが先生の耳に入り、「学校で商売をするな!」と怒られて、頭をぶたれましたからね(笑)。
松田: ええ?ほんとですか?(笑) 学校の中でやったら問題だとか、放課後にやりなよ、とかだったらいいですよね。お金を得るのがいやしい、というか普通以上に得るのはよくないという考え方なのかも知れませんね。