インタビュー・対談シリーズ『私の哲学』
私の哲学Presents
第85回「私の哲学」 ジョージ・アリヨシ氏

1973年、ジョージ・アリヨシはアジア系アメリカ人としてアメリカ史上初の州知事となり、以後12年間の任期を務めました。公正と正義を掲げ、ハワイ州知事として最長の任期を務めた彼にビジネス、政治、リーダーシップ、そしてハワイの未来について伺いました。

Profile

第85回 ジョージ・アリヨシ

ハワイ州元知事
1954年に公職に選出されて以来、ハワイ州副知事や、準州時代から州昇格後を通じて上院議員、ハワイ準州衆議院議員を歴任。過去のハワイ州知事の中で最長の任期となる、1973年から1986年の3期にわたりハワイ州知事を務めた。政治家引退後は、ハワイ弁護士会代表、イースト・ウエスト・センターや太平洋ハイテクセンターの議長を務める。クリントン政権下の「通商政策および交渉に関する諮問委員会」の一員として活躍し、米国公共放送システム協議会や国際交流基金の国際政策にも携わる。ミシガン州立大学で学士号を修め、ミシガン大学アナーバー校で法務博士課程を修了。法律と人文科学の分野で、それぞれ3つの名誉学位を授与。1985年に日本政府から最高の名誉である瑞宝大綬章と銀杯を受章される。

公正の真の意味

中学2年生の頃から、ずっと弁護士になることを夢見ていました。もし私が弁護士だったら、多くの困っている人を助けられると、常に考えていました。モンタナ州出身の政治家でハワイ準州の衆議院議員、のちにハワイ州の2番目の知事になったジャック・バーンズに初めて会ったとき、私はちょうど弁護士としての資格を得たばかりでした。彼は私に「ハワイの農園での差別的待遇について知っていますか?」と尋ねました。私は市街地で育ちましたが、農園について、そしてそこでの不当な労働環境について知っていました。ハワイ領の全ての土地や建物はサトウキビやパイナアップル農園を所有する5大財閥に管理されており、彼らは銀行や大規模な事業を経営し、海岸地帯を牛耳っていました。

企業による不正を正すようジャック・バーンズに説得され、私は政治家としてのキャリアをスタートさせました。先輩のダン・イノウエ、スパーク・マツナガと共に、ハワイ準州衆議院に選出された1954年のことです。手始めにサトウキビ農園の不当な労働条件を正し、そこで働く肉体労働者たちに失業保険を導入しようと思いました。機械工や技術者と違い、農園の肉体労働者たちは、当時の失業者に適用される法律の対象外だったのです。これは大変な不公平でした。公正さとは、身近な人がひどい扱いを受けないよう助けるのはもちろん、より重要なのは、自分とは関わりのない人々に対しても公平公正であることです。多様性もまた、公正さに関して語るべき課題です。単に異なる人種というだけではなく、異なる感じ方や視点を持つさまざまな人々、誰であろうが、どんな存在であろうが、私たちは誰に対しても公正であるべきです。

ハワイが州に昇格した1959年、私はハワイ州上院議員に選出されました。新しいハワイ州法の下、私たちは私たちの手で知事を選び、裁判官を任命することができるようになりました。ハワイが準州だった頃は、知事はワシントンが選出した人物でした。ハワイ州となって最初の政権、共和党の州知事ビル・クインの元、民主党が上院の過半数を占めていました。ビル・クインは次期裁判官に活動的な共和党員、サム・キングを任命しようとしていました。票は分かれ、私が所属する民主党は知事の推す候補を負かす好機と見ました。誰もが党の方針に沿う決断をしましたが、私は事の本質はそれよりも公正さだと考え、幻滅しました。民主党執行部の同僚たちは、サム・キングは賢明で裁判官として良い仕事をするだろうという意見に同意してくれました。彼は誠実な父親であり、夫であり、裁判官に十分相応しい人間だったのです。州には優れた裁判官が必要だったにも関わらず、同僚議員たちは共和党政権のこき下ろしに躍起になっていました。私は同調できなかった。執行部を離れ、サム・キングに電話をかけ、彼が任命されるために必要な一票を投じたことを伝えました。なぜなら私にとっての真の公正さとは、友人の輪の外側にも同じく公正であることを意味するからです。

5年後の1963年、ファースト・ハワイアン・バンクから役員にならないかと打診を受け、私が必要と思うこと、やるべきだと感じたことはやらせてくれることを条件に、この申し出を受けました。ここでも公正さが大きな課題でした。私は、行内と地域社会に公正さをもたらしたいと思いました。当時、上のポストに空きが出た場合、人材は外部から招聘されていました。ですから、地元の人々にとっては、いくら働いても社会の中で上昇していけるチャンスは限られていたのです。ビジネスや政治の世界では、暗黙のガラスの天井が存在していました。

明日を見つめるリーダー像

ファースト・ハワイアン・バンク初のアジア系役員として、私は求められている変革をもたらすことができるようになりました。他の取締役たちと話すと、彼らは私のような人物が現れ、改革を進めるのを待っていたと言うのです。1964年、ハワイ州上院に再選を目指し立候補したときも、私は同様のことを行いました。外に出て行き、地域の人々と公正さについて対話し、それにより大いに協働することができました。私の背景は法律と政治ですが、考えをより明確にするために、ビジネスを例に説明しましょう。

全てのビジネスにおける使命は、顧客の求める製品を作り出したり、サービスを提供することです。そのビジネスに関わる全ての人はその使命に同意すべきですが、リーダーは何をなすべきかを明らかにしなければなりません。彼らは人々をまとめ、1つのチームとして前進させなければなりません。今のビジネスのあり方に満足しているような会社は、いずれ取り残されて行く。リーダーは、常に新しい発想を持つグループや会社を探し続けなければならないのです。人には今やっている仕事が未来永劫繁栄していくなどと考える余裕はありません。ですから私は、リーダーは今日ではなく、明日を見つめなければならないと提言します。明日のあるべき姿、それを知らずして今日の問題が解決できるはずがありません。

リーダーは現状における問題を解決するだけではなく、将来にわたり何をすべきかを考えます。私の場合、州知事となった1974年に、ハワイが州となってからの15年で何が起こったかを把握しようとしました。その結果、アメリカは他の地域の3倍のスピードに相当する年2.5%のペースで人口が増え、自動車の数は当初の20万台から50万台に増え、道路渋滞を引き起こしていることに気がつきました。また、かつてない数の学生を抱え、教育に関する問題もありました。私は自らに「現在起こっている問題を解決するだけで十分だろうか?」と問いかけました。その時、25年後のハワイの姿を考え始めたのです。それこそがリーダーの役割なのです。そして、政策を共有する数百の協力者を得て、文化や経済、観光、国立公園、レクリエーション、交通を含む将来の目標に向けた12の機能計画を進めました。私はハワイの歴史の中で、これらを行ったただ一人の知事です。残念ながら、今日こうした考え方をする政治家はいません。

ハワイの未来

現代の政治指導者たちは、しばしば今起こっている問題について話します。彼らの行うことを批判はしませんが、彼らは将来に目を向けておらず、どんな問題であれその核心に迫ろうとしていません。彼らの多くが、現在起こっている問題を解決する方法が将来にわたり大きな影響をもたらすことを忘れています。ハワイの未来は、私にとって今も重要なのです。

観光はハワイの未来にとって、特に慎重にならなければならない課題の1つです。現在、観光はハワイや合衆国の経済にとって重要な手段だとみなされていますし、それには同意します。観光はここを訪れる観光客が楽しむことができれば大きな成功となりますし、ハワイの人々は観光客が地域の経済を刺激してくれることに感謝しています。観光に関する機能計画を策定しているとき、「処理能力」という言葉を作りました。観光客の数が処理能力を超えないよう、理解することを話し合いました。しかし、現在私たちはそれを忘れてしまっています。ごった返すビーチやショッピングセンター、島の至るところで我慢しなければならない観光客に申し訳なく思っています。処理能力を超えてしまうと、その悪影響は全体へと及びます。観光客にこれからもハワイを訪れてもらい、楽しんでもらえるために何をするべきか考えなければなりません。

知事としての任期中、ハワイは再生可能エネルギーの研究における先進州で、ワシントンの米国エネルギー省に重用されていました。ハワイは地熱エネルギーの分野では重要な第一人者で、ワシントンとあらゆる種類のエネルギーについて話していました。特に地熱や直近での噴火についてはいつも複数の問題がありましたが、実に多くの選択肢を試しました。将来のエネルギーを作る方法を探し続ける、ここが正に重要な点です。仮にエネルギーが結果的に再生可能なものだとしても、より良い方法を探し続けるのです。 もう1つ、私が重要だと感じているのは宇宙空間についてです。まだ未知の領域ですが、私たち、そして地球にとって実に強力な影響を持っています。宇宙計画はハワイにとっても実に重要です。ハワイは唯一、海の真ん中の赤道付近に位置する州であり、将来の宇宙開発における理想的な場所です。NASAも宇宙計画でハワイが重要な役割を果たすと信じていますし、バーキングサンドの天文学センターは他に先行しています。私たちは宇宙に対する比類なき考え方、先進的な宇宙飛行士の訓練プログラム、そしてハワイ大学が経営するマウナケア天文台群を保有しています。

根っこにあるのは、「おかげさまで」の精神

キャリアを通じ、公正さが指針だったお話をしましたが、謙虚さと忍耐強さもまた、私の世界観に影響を及ぼしました。父は、いかに優れた、あるいは才能のある人間でも、自分一人の力で最良の結果を得ることは難しい、という考えを表す「おかげさまで」という日本語を用い、何をするときにも謙虚さを忘れてはいけないと教えてくれました。何かを成し遂げようとするとき、人からの助力は欠かせません。そうして初めて自分一人以上の力が出せるのです。他者の協力を得たときには、全て自分で成し遂げたように自慢してはなりません。名声の独り占めをしてはならないのです。多くの人が携わってくれたことを認め、彼らへの感謝を表すのです。父はいつも「おかげさまで」という言葉を口にしていました。その考え方は私の一部となりました。私は名声が欲しいと考えることもなく、共に物事にあたった人々、特に骨の折れる努力を要する仕事を共に成し遂げた人々に対して、いつも感謝してきました。たとえ一筋縄ではいかないことも、諦めず努力し続ける「頑張る」ことを共にしてくれた人々に。

任期以前の話になりますが、第二次世界大戦における勇戦敢闘で知られる日系アメリカ人で構成された第442連隊戦闘団、第100歩兵大隊、彼らは白人や黒人の隣では小柄な男たちでした。
彼らは戦地に赴き、テキサス大隊を救援しました。他の部隊は救援を試み、失敗していました。そこで彼らは最も成功する見込みのある第442連隊戦闘団と第100歩兵大隊を呼んだのです。テキサス大隊の救援に向かった彼らは、甚大な数の死傷者を出しながらも諦めなかった。粘り、任務を達成した。これが「頑張る」という言葉の意味です。彼らにとって「勝ち目などない、諦めよう」は恥ずべき言葉だったのです。

終戦の一年後、私は占領軍の一員として日本を訪れました。日本に着いて一番最初に会話をしたのは靴磨きの少年でした。彼は7歳で銀座の三越ビルの前に立っていました。なぜその若さで働いているのか尋ねると、返答は驚くべきものでした。「だって国が大変なときだから」私は彼に大変感心し、昼食に行った際にパンとジャムとバターを買って渡しました。彼は「ありがとう」と言い、それを横に置いたのです。「食べないのかい?」と尋ねると、家に持って帰り、3歳の妹と分けると言うのです。これこそ日本人の魂だ、と思いました。正に「おかげさまで」や「頑張る」に表されるように。だからこそ、日本は急速な復興を遂げたのです。日本の戦後復興は奇跡とも言うべきもので、世界中のどんな場所にも例を見ません。

以上が私からのメッセージです。人は自らの、そして他の人たちのために物事をやり遂げる責任を負っています。現状に満足することなく、お互いを見守りましょう。私たちはいつでも向上できるし、今よりも良いことを行うことができるのです。

成功した人は、時に何もかも分かったつもりになることがあります。

時に立ち止まり、人と対話し、人の考え方や希望、願望を聞くことは大切なことです。年長者として杉山大輔さんと話すこと、また彼の希望や願望を聞くことは楽しかった。実に参考になりました。彼は未来そのものです。

アロハ!

ハワイ州元知事 ジョージ・アリヨシ


ジョージ有吉さんとの対談は、「未来」を常に考えることを意識させてくださいました。自分のことだけではなく、家族、周りの仲間たち、地域社会、国、地球の10年後、50年後、100年後がどうあるべきか?また、それに向かって自分に何ができるのか?

『私の哲学』第20回でオムロンの立石文雄会長を取材させていただいた際にも、「フェアネス」という考え方を教わりましたが、本物のリーダーはフェアであり、「公に報いる」気持ちが強いのが共通しています。

元ハワイ州知事としての素晴らしいご活躍をはじめ、男性として誠実にこれまでの人生を過ごして来られたことを知りました。柔らかい物腰ながら目つきは鋭く、乗り越えて来た数々の障害や問題などが、今のジョージさんを形作っているのだと感じます。「大輔は未来そのものだ」という大変嬉しいコメントをいただき、ますます前を見て、毎日を最大限に生きたいと思いました。

『私の哲学』編集長 杉山 大輔

2018年6月 Watanabe Ing LLP(Honolulu,Hawaii) にて 和訳:Queen & Co. 撮影:Better Half Kanae


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