人体の形に関する、ある結論を得られた花山水清氏。第41回は、体の不調に対する家庭での解消法の普及を目指す氏に、人体に現れるアシンメトリー現象について伺いました。

Profile

第41回 花山 水清(はなやま すいせい)

アーティスト
1956年北海道生まれ。武蔵野美術大学油絵科卒業。
元武蔵野美術大学非常勤講師。テレビ番組やCMの特殊美術制作会社経営を経て、1996年に施術家となる。美術家として訓練した目で見ることで、疾患の所在と連動する人体の法則“アシンメトリー現象”を発見する。現在は、“アシンメトリー現象”解消のために開発した“モルフォセラピー”の世界普及を目指し、モルフォセラピー協会を設立して活動している。
著書に『からだの異常はなぜ左に現れるのか』(廣済堂出版刊)ほか。
公式ホームページ

※肩書などは、インタビュー実施当時(2016年3月)のものです。

左側に現れる筋肉の収縮

デッサンするときのように、美術的な視点で人体を観察すると、顔や体の左右に違いがあることがわかります。しかもその違いには、規則性があります。顔の場合、右目に比べると左目は小さくなり、口角は左側が上がり、鼻の孔の形は左が円くなります。このような左側の筋肉の収縮が圧倒的に多いのですが、例外的に右側に収縮が現れることもあります。しかし、これまで何万人もの人を見てきましたが、肩から下は必ず左側が収縮します。左の肩甲骨が上がる、背中の左側の筋肉が盛り上がる、左のお尻が下がる、ウエストラインは右側がくびれて左側は寸胴になるという特徴が出ます。この顔面は圧倒的に左側で、ときに例外があることと、肩から下は例外なく左側に現れるという規則性が大きな発見だと思っています。

人体の最も美しい形は、左右対称とされています。古代ギリシャやエジプトの彫刻はすべて左右対称です。左右対称の体は神の現れであり、それが究極の美、美の原型となっています。この考え方がルネサンス期まで続き、それ以降もほとんどの人が人間の体は左右対称だと思っていますが、実際は違います。現在の医学上では、睾丸は左だけ下がることくらいしか知られておらず、人体の左右差に規則性があることまではまったく認識されていません。

モルフォセラピーを開発

左右差があるということは、今、体のどこかに異常があるか、将来的なリスクがある状態だということです。左右差は突然現れることもありますから、体からの一種の警告信号なのではないかと思っています。また、形の左右差に疾患が伴うなら、その非対称性を解消すれば、疾患をなくすことができるのではないかと考えられます。そこで、手技によって人体の左右差を解消する方法を開発し、“モルフォセラピー”と名付けました。モルフォロジー(morphology/形態学)とセラピー(therapy /施術・療法)から生まれた名称で、だれもが家庭内で、家族の手によって健康を維持できるように、形態学を基礎として研究開発したソフトな施術法です。

これによって、疾患に対するアプローチは解決しましたが、なぜ左一側性の現象になるのかという疑問は残っています。私が施術を行う中で得た結論は、自律神経、特に交感神経の異常だろうということです。交感神経の異常は、おそらくその元となる、中枢神経の異常だと思われます。しかし、それがなぜ左方向に特異的に発現するのか、左でなければならない理由があるのかどうかは未だに不明です。ここから先の解明は、専門家による科学的アプローチしかありません。

奇跡的なエピソード

奇跡的なエピソードを紹介しましょう。科学的な証明がされていないという意味で、あえて奇跡という言葉を使います。以前、脳性麻痺の子どもにモルフォセラピーを行っていました。ご両親としては、せめて「パパ、ママ」と言ってもらいたいと願っていました。しかし医師からは、「この子の脳はこれ以上発達しないし、一生歩くことはできません」と宣告されていました。ところが、医師の予想に反して、その子は歌が歌えるようになり、コンピューターが使えるようになったのです。その後も脳はどんどん発達していき、あとは、歩けるようになることだけでした。するとあるとき、自分で歩行器に乗ったのです。3歳からモルフォセラピーを始めて、5歳くらいのときだったと思います。ビデオに撮った歩行器に乗っている様子を見ると、脚が微妙に蹴る動作をしていました。脳に新しい回路ができた結果です。こういう奇跡的なことが起こる可能性は、まだいくらでもあります。

私は、アシンメトリー現象の解消は、今後の医療における大きな可能性を秘めていると考えています。これは科学によって証明されたことではありませんが、この現象が何を意味するのか、疾患との関係を専門の方に研究してもらいたいと思っています。

骨のズレが頭痛や腰痛の原因に

人間の背骨、椎骨にはズレが生じます。骨がズレるというのは、民間療法の考え方です。一般的にはゆがみという言い方もありますが、ゆがみは骨の変形を表す言葉なので、私は関節のズレという言葉を使っています。ここで言うズレとは、骨が本来ある位置から少し引きつったような位置になってしまうことで、脱臼とは異なります。実は、このズレがアシンメトリー現象の原因になっています。この骨のズレによって何らかの症状が出ることは、医学では知られていませんが、ズレた骨が周辺の神経を圧迫し、頭痛や腰痛、膝痛といった症状を引き起こしているのです。

モルフォセラピーは、ズレた骨を本来の位置に戻すだけの物理的な話です。ズレを矯正することで、体が本来の働きを取り戻します。左一側性にズレるという現象があることを、まず認識してほしいと思います。私が目指すところは、このズレが原因と考えられる範囲の病気は、家庭で治しましょうというものです。骨のズレで何らかの症状が出たら、ズレた骨を元に戻せばいいだけの簡単なことですが、この公式を知らずして、疾患に対処する方程式を解けるわけがないと思っています。

骨のズレの矯正法はマニュアル化され、モルフォセラピーとして普及し始めたところです。このモルフォセラピーを家庭で実践してもらうことで、ある程度の病気は未然に防げるのではないかと考えています。例えば、片頭痛の人は必ず頚椎の上から2番目が左にズレています。片側の筋肉が収縮して骨を引っ張ることでズレが生じ、そのズレた骨が神経や血管を圧迫して頭痛の原因になっていることまではわかりました。筋肉が収縮する原因は、おそらく何かの化学物質が原因でしょう。これは私の専門外ですから、左一側性という特殊な現象の存在が広く認知され、医学的、生物学的に研究されることを願っています。

これが私のアートだった

アートの本来の目的は、美の発見です。私はアートを追究しているつもりが、いつしか人体の形に美とかけ離れた現象があることを発見してしまいました。それから、美を復元する方法の開発が私の使命のように思い、奮闘してきました。その目標も、モルフォセラピーの完成によって達成されました。今では、左右対称であるべき人体の美の復元こそが、私のオリジナルなアートだったのだと考えています。

今回は貴重な場を設けていただいて、たいへん感謝しております。そもそも年長者との対談なんてやりにくいものでしょうし、病気の話は固くなりがちですから、さらにやりにくかったのではないでしょうか。
それにしても、杉山さんは第一印象からして爽やかでしたね。若いからというだけではなくて、若さゆえの妙な屈折もないですし、私の時代にはいなかったタイプだと思います。
決断力も行動力もあるし、ある種の根気強さもあわせもっていて、非常に魅力的な人です。つい周りの人が応援したくなるのも、杉山さんの良さでしょうね。そのまま夢をもって、どんどん人を巻き込んで、おもしろいことをやってください。これからがますます楽しみです。

アーティスト 花山水清


僕が大変お世話になっている先輩は長年体調が悪く、様々な方に改善方法を聞いてまわった末、花山水清先生にたどり着きました。骨のズレが引き起こす身体の異常について学び、身体のメンテナンスをしっかりすること、身体の状態を知ることが大切だと知ったそうです。医学的に解明されていない治療や改善方法もあると思いますが、先輩が僕の眼の前で改善されていく様子は、驚きの連続でした。
普段から「病は気から」を意識し、きちんとメンテナンスをしていないと、何年か後にまとまってダメージがきてしまうのでは?自分の身体をもう少し労ろうと思ったインタビューでした。

「私の哲学」編集長 杉山 大輔

2016年3月 都内・花山事務所にて  編集:楠田尚美  撮影:Sebastian Taguchi