フラダンサー憧れの存在、アリアナ・セイユ氏。日本にも数多くのファンを持つ氏が、フラを通して伝えたいこととは。

Profile

第51回 アリアナ・セイユ(ありあな せいゆ)

フラ・アーティスト
1983年アメリカ、ハワイ州ミリラニ生まれ。カメハメハ・スクール卒業。母親であり、著名なイワラニ・セイユの三女として生まれ、3歳からフラを始める。母からフラ、タヒチアンそのすべてを学び、ポリネシアンダンスのみならずジャズダンス、ベリーダンスなどアジアンダンスの数々も学んだ。ダンスパフォーマンスだけでなく、その美しさで数々の賞を受賞。「Ka Nani a Hawaii」と呼ばれ、ハワイの美の象徴として世界に活躍の場を広げる。1999年、ミス・ハワイ・ティーンUSAを獲得。2007年、ハワイで最も権威があるとされるフラ競技会“メリー・モナーク・フェスティバル”でミス・アロハ・フラ部門 1st Runner Up。2009年、ミス・ハワイUSAに選ばれる。2014年パフォーマンスを追求するため、単身タヒチへ。Tahiti Heiva 2014に参加。日本での公演は数多く、様々なアーティストとの共演、ショーのプロデュース。現在日本、中国、台湾、韓国など世界各国でフラ、タヒチアンなどのポリネシアンダンスの指導をしている。

※肩書などは、インタビュー実施当時(2016年9月)のものです。

フラは感情表現の一つ

フラは、ハワイにおける文化的アイデンティティーです。昔、ハワイ語に文字はなく、伝統や歴史、たくさんの物語はフラを使って語り継がれてきました。現在使われている文字は、ハワイに来た宣教師が文字を必要としたため、西洋人の耳に聞こえる発音をアルファベットに置き換えたものです。人は話すとき、言葉に加えて顔の表情やボディーランゲージを使います。フラはそれと同じ表現方法の一つで、踊りにはあらゆる意味があり、様々な事柄を伝えることができます。母がプロのフラダンサーでダンススクールを経営していたので、幼い頃からフラは私にとって日常生活の一部であり、人生に深く染み込んでいます。常にフラを通してハワイとのつながりを感じることができ、海外に居ても、アイデンティティーを見失わずにいられます。

日本とハワイには、とても深いつながりがあります。最後の王様カラカウア王は、横浜を訪れたことがあるんですよ。ハワイがアメリカ合衆国の一部となった当時、サトウキビ輸出の労働力として、日本や韓国、中国と労働契約を結びました。それによって、数多くの日本人が働きに来ました。家に入る時に靴を脱ぐ、お米を主食とするなど、日本の習慣をいくつも取り入れています。フラが広く日本の人々に受け入れられているのは、このような歴史的、文化的つながりがあるからだと思います。

心の交流を取り戻す

日本人は基本的に、恥ずかしがり屋ですよね。とても真面目で、嬉しい、寂しい、怒りといった感情を表に出すことを好みません。フラは言葉を使わずに、家族や友人、恋人を想う気持ちを伝えることができます。感情を素直に表現できるようにする良い方法は、表現するストーリーの状況に自分の身を置いてみることです。フラを教えるときはまず、曲の背景と作詞家について話し、その作家になったと想像してもらいます。曲の背景を知ると、感情と結びつけられるようになります。誰でもいろいろな感情を持ち合わせていますから、上手く表現できるかどうかは別として、感情移入することはできます。ストーリーを自分の中に取り込み、どのように感じ、行動するかを考えてみると、体を使った感情表現ができるようになります。踊りだけでなく、曲の意味を教えることも指導する上で大事なことだと思います。

フラを経験すると、感情を表に出すことは心地良いことがわかり、少し行動的になってみよう、他のフラダンサーにも会ってみようという気持ちになるはずです。フラのグループは、第二の家族のようなもの。本当の家族に助けを求められないとき、両親に相談するのが恥ずかしいようなときは、フラの先生や仲間と話をします。フラの仲間は、お互いにサポートし合う素晴らしいグループです。現代はテクノロジーが発達して便利になった一方で、人間同士のつながりが失われつつあります。会話の大半をメールが占めていますが、メールでは相手の感情を推し量ることはできません。1次元の世界に心を奪われている人々に対し、大自然や他人の心、内なる自分とつながる大切さを伝え、彼らを閉ざしている壁を壊したいと思っています。フラのグループに所属すると否応なしに人と関わりを持つようになるので、心の交流を取り戻すことができると考えています。

内なる美しさ

“Aʻohe hala ʻula i ka pō.”これは、私が好きなハワイのことわざで、「halaという木に咲く特別な花は、暗闇では本当の色を見せない」という意味です。人の内なる部分はミステリアスで、他の人には分からないその人自身です。私は指導者として、内なる部分を表に出し、そのものが持つ色を様々な形で表現できるようにサポートします。生徒一人ひとりに、内側から美しくなってほしい。自分で自分を美しいと感じない限り、周りの人が美しいと感じることはありません。美しいものは誰かに見てもらい、憧れられたり、尊重されたりするべきです。あなたの内なる美しい色を表に出しましょう。フラを通して自分自身を感じ、信じられるように導く。これが私の指導スタイルです。

私自身のこれから

これまでプロのアーティストとして活動してきましたが、今は表舞台に立つ必要性を感じていません。これからは舞台プロデュースや、ダンサー育成に力を注ぎたいと思っています。また、ショーを楽しみながら少しでもハワイの歴史や文化を知ってもらうため、ハワイ文化にエンターテインメント要素を加味した、ミュージカル風のポリネシアンショーやフラダンスショーを制作するという夢もあります。嬉しいことに、2020年に開催される、フラのオリンピックと呼ばれる“Merrie Monarch Festival”のショーを任されました。日本も含めた、招聘を受けた35団体が参加します。地元であり故郷で開催されるイベントですから、エンターテイナーとして、ディレクター兼脚本家、振付師、選曲や衣裳担当として、最高のショーにしたいと考えています。

「基礎がきちんと身についていなければ、伝統文化に手を加えることはできない」と、ハワイ文化の専門家に教わりました。私は幸運にも、伝統的なダンス、言葉、その他すべてを学ぶ機会を得て、基礎をしっかり習得したという自信があります。ですから、固定概念に囚われず、新しいものを構築したり先進的なことを考えたりできると思っています。伝統に敬意を払い、正しい手順を踏んで新たなチャレンジに取り組みます。

哲学とは、しっかりと根を下ろしながらも、新しい発想から刺激を受けて生きること。そして、自分がこれまで歩んできた道を常に意識しつつ、これから歩むべき道を見失わないこと。変人と思われることを恐れてはいけない。変わり者だけに見える不思議で素晴らしい世界があるのだから。
私は輝いているものが大好き。自分らしくキラキラ輝け!

アリアナ・セイユ フラ・アーティスト


今回は、フラの世界で絶大な人気を誇る、アリアナ・セイユさんにご登場いただきました。英語でのインタビューは初めてでしたが、英語のニュアンスを上手く日本語のコンテンツとして完成させることができたと思います。最も印象的だったのは、アリアナさんの目力とエネルギー溢れる笑顔。彼女はフラワーアートもされており、プレゼントしたお花をその場でご自分のヘアアレンジに使われ、写真に華やかさがプラスされました。今後、指導者としてより一層活動の場を広げるアリアナ・セイユさんを、行動する勇気の仲間として応援していきます!

「私の哲学」編集長 杉山 大輔

2016年9月 art space Pemaにて  編集:楠田尚美  撮影:Sebastian Taguchi

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