ITジャーナリスト、ソーシャルメディアコンサルタントとして多彩な活動を展開している神田敏晶氏。これまでの経験や、今の世の中に対して思うことなど様々なお話を伺いました。

Profile

第23回 神田 敏晶(かんだ としあき)

Kanda News Network代表
ITジャーナリスト ソーシャルメディアコンサルタント
ワインの企画・調査・販売などのマーケティング業を経て、マッキントッシュをメインとするコンピュータ雑誌の編集とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送局「Kanda News Network」を運営開始。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部で非常勤講師を兼任後、ソーシャルメディア全般の事業計画立案、コンサルティング、教育、講演、執筆、政治、ライブストリームなどの活動を行っている。

※肩書などは、インタビュー実施当時(2013年11月)のものです。

ワインショップオーナーのはずが雑誌編集長に

学生時代に、半年ほどアメリカでバックパッカーをしました。言葉が通じず、右も左もわからない状況で、レストランで注文するのもメニューを指差すだけ。現地の人と交流する度に単語を一つひとつ覚えていく日々を過ごし、度胸がつきました。バックパッカーを終えて、ワイン関連のマーケティング会社に就職し、東京でサラリーマン生活を5年間送りました。それから、実家の酒屋でワインショップを開こうと思い神戸に戻ります。お店を作っている1年間することがなかったので、デザイン会社で営業をしていました。Appleの大阪ブランチへ営業に行って何度か仕事をもらっているうちに、元々マッキントッシュが好きだったこともあり、すっかりその仕事が面白くなってしまいました。結局、ワインショップそっちのけでミニコミ紙『Mac Press』を作り始めます。

Macの市場は当時まだ1%くらいでしたが、日本での市場の広がりを見込んで関西圏から広告を取り、DTPで月5万部ほど制作していました。雑誌営業の場合、表4(裏表紙)にメジャーな企業の広告を年間で取ることが一番の仕事です。半年くらい前からクライアントの予算、どうしたら相手のビジネスが上手く行くかを考えてアプローチします。表4が決まると中面の広告は決まりやすい。だから表4にメジャーなナショナルブランドが入らないと、その雑誌のクオリティは落ちてしまいます。

アメリカで学んだコミュニケーション術

『Mac Press』は新しい媒体だったので、第2号を出すとき、ある戦略を立てました。当時Appleの会長だったジョン・スカリーを追いかけてアメリカへ行き、イベント会場で "Nice to meet you again."と話しかけました。初めて会うけれど"Again"を付けるんです。誰だかわからなくても日本人に"Again"と言われると、以前に会ったかもしれないから"Hi!"となる。それで僕の雑誌を見せて、手に持ってもらって写真をパシャパシャと撮り、第2号の表紙に載せました。そうすると『Mac Press』を見た人は、たくさんあるMacの雑誌の中でもジョン・スカリーが認めている雑誌だと思うわけです。でも、会って写真を撮らせてもらったことは嘘ではありません(笑)。

ビル・ゲイツに「Ouch!」と言わせたこともあります。握手をしながら、もう一方の手で肩を叩くんです。周囲にいる広報の人たちは、会長の肩をパンパン叩くくらい仲が良い人なんだと思うと失礼なことはできない。その他にも、握手するときは相手よりも強く握るとか、そうしたコミュニケーションの取り方を、アメリカで実体験として学んできました。僕は流暢ではないけれど、英語が話せないとは言いません。英語が話せるか話せないは、0か1か、Yes or Noでしかない。This is a pen.が言えても話せないと言うのは違うと思う。話せるレベルの問題だけです。

すべては人に喜んでもらうため

会社のミッションは、「世界を今日より少しだけ幸せにしたい」です。僕が仕事において一番大事にしていることは、自分が楽しいと思えるかどうか。楽しいと思える内容は人によって違いますが、僕は人に喜んでもらえると楽しいと感じる。だから仕事だけでなく、普段もそのことを考えています。例えば、雨が降りそうな日は家にある傘を2本持って行きます。急に降られたときにコンビニで買ったりして、ビニール傘って溜まりますよね。でも捨てるのはもったいない。2本持っていると、傘がなくて困っている人にあげることができます。良かったらどうぞって渡すと、女性の目はハートになっていますよ(笑)。ちょっとしたことだけれど、自分の中での満足度はすごく高い。

そう考えると、今の経済社会における希少価値を奪い合うような生活には少し疑問を感じます。ネアンデルタール人は奪い合う生活をしていました。その後、クロマニヨン人から他者と共有することを覚えます。ラスコーの洞窟に壁画を描いたクロマニヨン人は、火を起こすのは大変だったかもしれないけれど、言葉も文字もないのに絵を描いていた。だからきっと今よりも心に余裕があって、もしかすると音楽も作っていたかもしれないし、ルネサンス以上に豊かだったかもしれません。

自分の足で立てる人間に

現代の人間ってクロマニヨン人以下なんじゃないかな。オレオレ詐欺の登場や、インターネット時代なのにも関わらず法律で縛ろうとする流れもあって、賢くなればなるほど、心の豊かさを失っているように思います。お金よりもっと価値のある生産活動をする必要があって、それによって、お金が後からついてくる生活が理想でしょう。最終的には自分の力で食べられることが肝心です。インドでは、貧しい子どもに1円もあげてはいけないと言います。それはもらえることが当たり前になり、自分の力で生きていこうとしなくなってしまうから。貧しい者は、お金がある人から奪うのは仕方ないという感覚は良くないですね。自分の足でしっかりと立った生き方をしている人間だからこそ、他者に分け与えることができる。自立のために最初のシードを出した人が、次もそれを当てにされて困ってしまってはお互いWin Winになれない。1番目の人に続いて、2番目、3番目に出す人が、自立の次の過程を見込んで投資をする。これはイーブンですよね。こうして自立している者同士が上手く関与し合っていくことが、本当の意味でのシェアなんじゃないでしょうか。

僕は、自分が何のために生まれて来たかを誇れる死に方をしたいです。僕が死んだときに、「神田さんが死んじゃって寂しいな」と思ってくれる人を1人でも多くしたい。そのためにもっと有名になって、もっと偉大なことをしなければ。これが僕の今の夢かもしれません。



KNN神田のソーシャル・エンパワーメント


ソフトバンクアカデミアで知り合った神田ポールさんは、僕と同じ誕生日で、最初にお会いした時から似た空気を感じていました。神田さんは本当にポジティブな方で、一緒にいると自分もポジティブになれます。

TOEICの点数は高くないそうですが、海外で活躍するのに点数は関係ないと、そのコミュニケーション力の高さが証明しています。突撃取材など、まだまだ僕は甘い!(笑)自信を持って発言、行動することが重要だとインタビューを通して再確認しました。

やはり、元気があること、前向きであること、好奇心があること、持続性があること、柔軟性があること、そして神田さんのように楽観的な視点性を持つこと。さらに冒険する気持ちがあれば、人に喜んでもらえる仕事を提供することができ、自分の足で立てる人間になれると確信しています。インタビュー中の「自立している者同士が上手く関与し合っていくことが、本当の意味でのシェアなんじゃないでしょうか?」はこれまでの意識してきた仲間作りです。来年もより多くの仲間を探して社会に還元できる企業になりたいと考えています。

「私の哲学」編集長 杉山 大輔

2013年11月 インターリテラシーオフィスにて  編集:楠田尚美  撮影:鮎澤大輝