美容室経営に独自のフランチャイズ制度を導入し、業界トップのグループ企業に成長させたカリスマ経営者、國分利治氏。感情を表に出さない氏の心の内を伺いました。

Profile

第45回 國分 利治(こくぶん としはる)

株式会社アースホールディングス 代表取締役
1958年福島県生まれ。工業高校電気科を卒業後、地元の縫製工場に就職。19歳のとき美容室の経営者になることを目指して上京し、東京・新宿の美容室に住み込みで働き始める。1年半後に店長、5年後には17店舗を管理するマネージャーとなり、30歳で独立。1989年、東京・葛飾に1号店をオープンする。1995年、 アメリカ美容サロン視察を機に、大型店舗展開へと出店戦略を大転換。社員から86 名のオーナーを輩出した独自のフランチャイズ制度により成長路線を歩む。2007年、海外1号店となる“Earth Hairdressing Oxford Circus London”をオープン。現在、美容室“EARTH”は国内外に230店舗、スタッフ2,750名を擁する業界トップクラスの美容グループとなっている。
著書に『成功を引き寄せる地道力』(扶桑社刊)、『地道力 新版』(PHP研究所刊)がある。

※肩書などは、インタビュー実施当時(2016年7月)のものです。

やるか、やらないか

僕の人生は単純です。〇か×か。やるか、やらないかです。やると決めたらとことんやる。中途半端なことはしません。〇か×かの判断基準は、楽しいか、楽しくないかです。楽しいと思ったらやるし、楽しくなかったらやらない。人のためにならない商売や人を不幸にする商売も、たとえ儲かるとしても決してしません。〇でも×でもない△は、「このままでもいいや」という自分の力を全部出し切らない、もっとできるのにやらない人の発想です。三流というのは、やってもできない人のこと。気持ちだけ入って頑張っている。だから結果が出るまでに時間がかかってしまいます。でも、継続していく根性を持っている人が多く、成功しなくても潰れません。失敗してもバカにされても潰れない人っていますよね。これは一流と三流に共通しています。

人は成功すると、それ以上の高みを目指さなくなることがあります。一流の人は常に目標を定めていますが、三流の人は少し頑張って結果が出ると、さらなるステップアップを目指さず元に戻ってしまうことがあります。二流の人は最初から自分は普通より少し上だと思っていてマイペースなので、年齢と共に落ちてしまいます。何もしないでいて、時間の経過と共に良くなることはないのです。

経営者を演じる

仕事をしないで遊んでいるように見えても、実はきちんと仕事しているというギャップがいいなと思っています。仕事しているように見えてしていないのはまずいけれど、チャラチャラしているように見えてきちんとしている方が、売りになると思うんです。「こいつ面白いな」と思ってもらえたらいい。これは、この職業だからできることかもしれません。もし銀行員だったら、信用してもらえないでしょうね(笑)。

僕は、“美容室の経営者”という役を演じています。自宅にフェラーリを置いていますが、僕を守る鎧みたいなもの。美容室の経営者が乗っていそうな車だから持っているだけで、実際には乗っていません。経営者を演じながら、常にもう一人の自分がそれを客観的に見ています。いろいろな本を読んでみると、客観的に自分を見ることは宗教的な意味合いにおいて“離脱する”ことのようです。宗教の世界においては平常心が基本で、感情が表に出過ぎるのは良くないこととされています。僕は性格的に感情の起伏がないタイプで、嬉しくても喜ばない、悲しくても落ち込みません。経営者という役を演じているだけですから、失敗しても悔しくないし、成功しても嬉しいとは思わないんです。

成功と幸せの違い

成功というのは、人、モノ、お金を手に入れることだと思います。僕の目標は、年収3億円、フランチャイズのオーナー100人、美容室200店舗です。これらを実現できれば、世間からは成功したと思われますよね。でも、幸せだと思われているわけではないでしょう。幸せはまた別なところにある。成功したらその次の幸せにステップアップできないと、人生での幸せは掴めない。成功だけで終わる人は、最終的に幸せにはなっていないと思います。

上には上がいて、成功にはきりがありません。僕に成功したという感覚がないのはそういうことだと思います。目標がある程度までいくと、次の目標を作ってしまいます。100人の経営者を育てたら、次は150人と。いつかは成功の天井を決めて、幸せのステップに向かわなければと思っています。幸せの定義は、手に入れたものを使って自分が楽しみ、人を楽しませることだと思います。だから、Apple社を作ったスティーブ・ジョブズ氏は、人もモノもお金も全部手に入れたけれど、幸せは手に入れずに、人生を楽しまないまま亡くなってしまったように思えてなりません。

マインドを仕組み化

“EARTH”だからできること。それは、心の問題だけだと思います。技術的なことやサービスの付加価値、お客様を大事にすることは基本中の基本です。スタッフが2,600人ほどいるので全員が同じマインドでお客様に接するのは難しいことですが、他店との差別化を図るには、その点が一番のポイントとなるでしょう。人対人ですから、お客様と美容師との相性もありますし、第一印象で気に入ってもらえなかったら、どんなに丁寧なサービスをしても煩わしく感じてしまいます。EARTHのマインドを仕組み化したいのですが、サービス業の場合、マニュアルや仕組みには限界があり難しい問題です。すぐに実現できることではないので、諦めずにやっていくしかありません。

“100人の経営者を育てる”目標を達成したら、そのノウハウを整理してビジネス化し、アジアに進出したいと思っています。現時点では、サロンではなくノウハウを伝えるアカデミーの展開を考えています。

ニューヨーク育ちだからなのか、外国人特有の押しの強さを持ち、常にプラス思考でチャレンジ精神も旺盛。着実に目標を達成していく姿勢はすばらしい!!そんな中にも、昔の日本のわびさび精神や、武士道精神も忘れず大切にしているように感じます。日本と世界をまたにかける坂本龍馬を彷彿させる人物ではないでしょうか?
彼は日本を変える力を持っていると思います。これからさらなる活躍を期待しています!

株式会社アースホールディングス 代表取締役 國分 利治


息子3人の髪は、生まれてからずっと毎月僕が切っています。高校時代には美容師になろうと考え、美容学校の資料を取り寄せたことがあるほどです。そんな以前から興味のある美容業界の中でもビッグなEARTHの社長 國分利治氏の経営哲学は、とても参考になりました。「経営者」を育てる。グレイトな目標ですね。
國分社長の著書『地道力』を拝読し、すべての結果は「◯」と「×」ということにとても共感しました。それ以来、自分自身が何か行動を起こした際はすべての行動を記録し、良い結果も悪い結果も、◯か×で完結させています。意外とその時点で×だという結果でも、時間が経つと◯になることがあります。
「やるか、やらないか」というのは、人生においてもっとも分かりやすいコンセプトだと思います。いつの時代でも「やる人はやり、やらない人はやらない」のです。英語ではやる人のことをDOERと言います。國分社長はまさしくDOER。僕もDOERであり続けたいと思います。

「私の哲学」編集長 杉山 大輔

2016年7月 アース本社青山ファーストビルにて  編集:楠田尚美  撮影:Sebastian Taguchi